芽生え。

「獣医師は動物の命を救う仕事」
とよく言うけれど
「救う」という言葉を使う事に
何ともいえない抵抗を感じる。

動物達の一生の中で一番大切なのは
飼い主とのコミュニケーションと
飼い主が行う健康管理だと思うから
獣医師の役目はそれに対するアドバイスと
病気を発症した時の治療の、
一生の中のほんの一部だと思うと
「救う」と言う言葉は重く感じられる。
それに、どんなに優秀な獣医師になっても
全ての動物の命を助けられるわけじゃないから
その言葉を使うのはおこがましく思える。

そんな事を友人にもらしたら
「救うという気持ちが無かったら全て中途半端になる。
救うという言葉を使うほど重い事をやっている。」
と言われて、ふむっと考えた。

たぶん「救う」という言葉に違和感を感じるのは
今の自分が紙の上の知識だけで頭でっかちで
命に触れる事すらままならない状態だから。
たぶんまだ、「命を扱う」という事を実感していないし、
周りからもそれほどその責任感を求められていない。

もちろん動物は好きだし
苦しんでいるところを見たら助けたいと思うけど
まだ、「救いたい」という気持ちが、
理屈では伝えられない沸き上がる思いが
どこに隠れているのか分からない。
そして、急患を連れてこられても
何をすればいいのか分からなくて
路頭に迷うことしかできない今の自分が
その言葉を使うのは上辺だけな気がしてしまう。

憧れからくる正義感だけでは
もう通用しない現実。

なんだかんだ「命を扱う」という事が怖いのだと思う。
未熟な自分は、その無意識な恐怖心があるがために
「救う」を「助ける」という言葉に置き換えて
逃げようとしているのかもしれない。

遅かれ早かれその恐怖心と向き合う日が来る。
それを自分なりに乗り越えられた時に
新しい使命感が燃え上がり、
「救いたい」という一途な願望が
生まれるのだと信じていたい。

先週末起きた竜巻で多くの馬が犠牲になった。
幸いにも生き延びた馬もいるけれども
そのうちの重症患馬が何頭か大学の病院にいる。
皮膚がはがれて筋肉がむき出しになったこや
首に怪我をして首が固定されているこもいた。
竜巻が去った直後は本当に酷かったようで
何人もの獣医師が現場に駆けつけたけど
たくさんの馬が虹の橋を渡ることになったらしい。

このシチュエーションで
自分はどうしたいのかと自問自答した。
話を聞いて心を痛める事しかできないのは嫌だと思った。
はじめの一歩。

Comment

Re: 芽生え。

この間、他の獣医さんが誰もいない時に、「馬が怪我した」という電話がかかってきて青くなりました。自分が、やるしか、ないのかっ、と。
結局、課長さんが戻ってきて診て下さったのですが、怖かったです。「救う」べき命と向きあうことが。
だけどたぶん、そうして青くなる経験を通して、「覚悟」ってものができていくのだろうと、思っています。私の場合は、「思い」というよりは、「覚悟」だろうと。

2011.04.23(Sat) 20:49       名古孟大 さん   #-  URL       

Re: 芽生え。

彩さんの友人の言葉は正しいと思います!
私の場合だと、いつも点検してる電気設備はもちろん他人の所有物なんですけど、点検するにあたっては自分の所有物だと思い込んで、ぬかりなく見るようにしてるんですよー。この心構えがあれば、お客さんは安心して任せてくれるんだと思います。

彩さんも診療するときは、しっかり患者さんとマンツーマン(診察は1対1ではないかも知れませんけどw)に近い心構えに切り替えできるようになったら、きっといいと思います!

2011.04.24(Sun) 00:22       アイテム さん   #9u5TtERQ  URL       

名古さん

> この間、他の獣医さんが誰もいない時に、「馬が怪我した」という電話がかかってきて青くなりました。自分が、やるしか、ないのかっ、と。
> 結局、課長さんが戻ってきて診て下さったのですが、怖かったです。「救う」べき命と向きあうことが。
> だけどたぶん、そうして青くなる経験を通して、「覚悟」ってものができていくのだろうと、思っています。私の場合は、「思い」というよりは、「覚悟」だろうと。

コメント返しが遅くなってしまって
申し訳ありませんでした。

覚悟ですか・・・。
獣医師になられた名古さんが言われると
重みがありますね。
昔だったら分からなかったでしょうが
今はその感覚分かる気がします。
怖いですが、向き合わないといけないですよね。

2011.05.02(Mon) 19:43       彩 さん   #-  URL       

アイテムさん

> 彩さんの友人の言葉は正しいと思います!
> 私の場合だと、いつも点検してる電気設備はもちろん他人の所有物なんですけど、点検するにあたっては自分の所有物だと思い込んで、ぬかりなく見るようにしてるんですよー。この心構えがあれば、お客さんは安心して任せてくれるんだと思います。
>
> 彩さんも診療するときは、しっかり患者さんとマンツーマン(診察は1対1ではないかも知れませんけどw)に近い心構えに切り替えできるようになったら、きっといいと思います!

コメント返しが遅くなってしまって
申し訳ありませんでした。

お久しぶりな感じですが
お元気でしたでしょうか?

私も友人のいっている事は正しいと思います。
たぶん、今は心の変化の途中な気がします。
この先どういう事が起きるか分かりませんが
卒業する頃にはマンツーマンで向き合う
覚悟を持てるようになりたいですね。

2011.05.02(Mon) 19:47       彩 さん   #-  URL       

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